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「【コラム】全日本選手権期間中に最悪のホテルに宿泊した話 その1」の続きです。
カビ臭い匂いに戸惑っていると、ムッシュがフロントから出てきて、部屋まで案内してくれました。
廊下の明かりは最小限で、まるで予備灯のようです。
横に目をやると最近はめっきり見かけなくなったホットスナックの自動販売機が光っていました。
廊下をムッシュと歩いていると、向こうからスタッフらしき中年女性がやってきて無言のまま会釈しました。
ムッシュの奥さんでしょうか。今後はこの女性を「マダム」とします。
マダムの表情はにこやかでしたが、声を発しません。
笑顔のまま無言で後ろに去っていきました。
部屋の前に着き、ムッシュがドアを開けると「どうぞ、ごゆっくり。なにかあればフロントに連絡してください」と言って、暗い廊下へ吸い込まれるように姿が見えなくなりました。
部屋に入ると、廊下とは違うカビ臭さが漂っています。そして廊下の寒さが部屋の中まで続いていました。
寒さのせいか急に尿意を感じ、ユニットバスのドアを開けると、洗面台に使用済みの歯ブラシが置いてありました。
一度使って捨て忘れたわけではないことは明らかでした。ブラシの先は曲がり根元は黄ばんでいて握る部分には細かな傷がたくさんついていたのです。
そして洗面台には厚みすら感じるほどの水垢がびっしり付着しており、配管を伝って床まで広がっていました。
トイレを済ませると喉が乾きました。
廊下に自販機があったのですが、最近はあまり見かけないような飲み物ばかりだったので、コンビニに行くことにしました。
部屋を出てフロントに向かうと、途中のドアがガタンと音を立て、マダムが出てきました。マダムはまた無言のままニッコリと笑顔を見せました。
フロントのムッシュにコンビニに行ってくると伝えると、丁寧に道順を案内してくれました。
そして「どうぞこれを持っていってください」と言って、懐中電灯を渡してきたのです。
「いや、懐中電灯なんて大丈夫ですよ」と断ったところ、ムッシュは「いやいやこの辺りは街灯がないですから。どうぞどうぞ」と言って、懐中電灯を握らせてきました。
ホテルを出て裏手にまわるとすぐに林道のようになりました。確かに懐中電灯がなければ足元すら見えません。
ここまで暗いとすぐ近くに鳥居やお墓があったとしても気づかないでしょう。
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続く。
【コラム】全日本選手権期間中に最悪のホテルに宿泊した話 その1
【コラム】全日本選手権期間中に最悪のホテルに宿泊した話 その2
【コラム】全日本選手権期間中に最悪のホテルに宿泊した話 その3
【コラム】全日本選手権期間中に最悪のホテルに宿泊した話 その4
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